君と出会ってーー。~あなたがいた頃は~
空斗がお母さんを…海生さんを忘れてしまった…







1番身近な人を…








血のつながった家族を…。








「ははッ…何言ってるの~空斗のお母さんの海生さんでしょ…?」









「母さん…?あの人が…?」








「ま、いつか思い出すでしょ!!ね?」









「…そだよなー!」







あたしの背中に寒気がはしる。







ああ、こんなにも簡単に忘れて行くんだと思ったら、






自分との思い出を簡単に忘れられてしまうのが、怖くて怖くて。







“忘れてほしくない。”






こんな思いを抱くあたしはなんてワガママなんだろう。







もう…無理だって分かっているのに。







「…琴音?大丈夫か?顔色悪いけど…。」







…空斗はまだ、あたしの事を“琴音”って呼んでくれてる…。





大丈夫。




おちつけ、自分。







「そう?んー、昨日夜遅くまで起きてたから…あっ平気だから、気にしないで?」








「あ…ああ。しんどくなったら自分の部屋に戻れよ?ってか、しんどくなる前に!」







「はいはい。空斗はほんと心配性なんだから」







「うっせー笑」






ごめんね、空斗。







あたしさっきから嘘ばっかり…。







でも、絶対に部屋には帰らないよ。






少しでも一緒にいて、あたしの事忘れないようにするんだから!

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