君と出会ってーー。~あなたがいた頃は~
「…風邪、ひくぞ。」




「…分かってる。」




蓮の優しい声。





…風邪、ひいてもいいの。




頭冷やしたかったから。




だから、屋上に来たんだもん。





「ちゃんと分かってるよ。空斗の優しさだって。だけど、だけど…ね」





ふわっと体に服がかかった。





そして、ドサッと蓮があたしの横に座る。





「怖くなった……だろ?」




「…うん。急に現実を突きつけられて…怖くなったの」




せっかく逃げていたのに…。




「…俺達は、逃げられないんだ。逃げても逃げても、現実につれ戻される。分かるか?」





「分かるよ…。逃げるほど、…悲しみが大きくなってしまう。」




あたしと蓮に突きつけられた現実はあまりにも大きすぎたんだ。




「…戻ろ?」




あたしは無言で頷いた。




そうだ、逃げてばっかりじゃ駄目なんだよ…。




やっぱり空斗はすごいね。




ちょっと分かりにくいけど、




あたしに大切なことを教えてくれるんだ。


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