君と出会ってーー。~あなたがいた頃は~
それから、あたしの体調は急変した。




吐き気がずっと、襲ってくる。




空斗の病室に行こうと思っても、身体が言うことを聞かない。





呼吸器をつけたまま、天井をにらみつけるだけの日々が何日も続いた。





そうやって過ごす日々に毎日思う事。




"空斗に会いたい"




心の底から、思っていた。




空斗のことを考えると少し、ほんの少しだけだけど身体が軽くなる。





あたしは、車椅子に乗って病室をそっと抜け出した。




もちろん、行き先は空斗の病室。




ガラッ





「こんにちはー!」




空斗は、ベッドで本を読んでいた。




「こんにちは。えっと…琴音…だよな!?」




え?何で、わかるの…?




「さっき、俺の母親だって人から聞いたんだ。『車椅子で、空斗の病室に来る女の子は、"琴音"だよ。あんたのすごく大切な人。』だって。」





「嘘…。」




こんな形でも、空斗があたしの名前を呼んでくれる。




嬉しくて、涙がでるよ。




そして、空斗はニコッと八重歯をみせて笑い、言った。




「お見舞いありがと!俺の"大切な人 琴音"!!!」











< 177 / 234 >

この作品をシェア

pagetop