君と出会ってーー。~あなたがいた頃は~
空斗は目を閉じたまま、規則正しい寝息を立てている。




どうして…?空斗…。




早すぎるよ…。



嘘でしょ?



嘘だって、言ってよぉ…。




「う…ひっく…ぐすっ」



涙はあふれて止まらない。



すると空斗の担当医が口を開けた。



「あの…空斗くんはもう…確実に助かりません。申し訳ございません。そこで、提案があります。」




そう言って先生が海生さんに耳うちをした。



すると、海生さんは目を見開き、空斗の顔をジッと見つめた。




「空斗が…そんなことを…?本当ですか?」




「はい。お願いされました。」




すると、海生さんは決心したかのように頷いた。




「ぜひ、お願いします…。空斗の喜ぶ事をしてあげたいんです…。ありがとうございます。」




何を言ったんだろう…?




空斗の喜ぶこと?



空斗が逝っちゃいそうなのに、“ありがとうございます”…?




あたしの頭の中では“?”で一杯だった。




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