君と出会ってーー。~あなたがいた頃は~
「空斗…」




涙で瞳がうるんで視界がぼやける。




「コ…トネ…。今…まで…ずっと一緒に…居て…くれて、あ…り…がと。」




「すごく…楽しかった。初め…ての…デートは、水族館…だったよな?琴音…に“好き”…って言われたとき…嬉しく…て、涙が出そうに…なった。ずっと一緒に…いれなくて…ご…めんな?」




もぅ、喋らないでいいから…




ちょっとでも一緒にいれたら、あたしそれだけで幸せなんだよ…?




「全部…思い出したの…?…何言ってんの…?今からじゃん。あたし達の未来は続いてんだよ?あたしの夢…叶えてよぉ――。」




「…ゴメ…ンな?琴音…大好き…だ…y…―――――。」



空斗の瞳からは涙が流れていた。




でも、あたしの大好きな笑顔で笑っていた。




ピ――――――――――――――――――




先生が空斗の瞳にライトを当てると首を振り、時計を見た。




「2月20日 午後4時36分…。ご臨終です。」




空斗…やだ…空斗っ…!!




あたしは空斗が大好きなの。



ちょっと茶色がかった髪も、いつもかぶっていたニット帽も。




笑うと見える八重歯も大きくて温かい手も




しぐさも、香りも、声も 全部、大好きだった。




ずっと一緒にいたかった。




隣で笑って居たかった。




居なくなっても気持ちは永遠に変わらない。




大好きだよ―――――。








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