君と出会ってーー。~あなたがいた頃は~
「そういやさぁ、琴音は夢とか…ないの?」



空斗がふいに話してくる。



「夢?…って、さっき絵馬に書いたでしょ?空斗とずっと一緒にいる事があたしの夢だよ?」




「ああ…そう…だったな。」



ホント…嘘が下手な人。



無理やり笑顔になって、



無理やり会話を探して。




隠してる事くらい、分かるのに。




でも、そんなにあたしに知られたくないのなら、探らない。




空斗との関係を偽りたくない。




「じゃ、あたし自分の病室戻るね。空斗、1人になりたそうだから…さ?」



あたしが言うと、空斗の表情がまた、変わる。




「ごめん…。ありがとう。」



「うん。明日も…くるね?」



「あぁ。待ってる。」



あたしは空斗を後にし、自分の病室へ戻った。



今の空斗は何を言っても、偽りの笑顔で、返事する気がするから。



1人になりたいと思っているハズだから。



何があったのか教えて欲しいけど、言ってくれないなら、それでいい。



空斗を苦しめたくないから。



あたしは空斗を…信じてるから。
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