君と出会ってーー。~あなたがいた頃は~
~琴音side~

なんだか心がポカポカする。



無意識の中で、誰かが、




空斗が手を握ってくれている。




それがわかった。




空斗に握られている所は暖かくて、幸せで。




「おい…琴音、起きろよ。」



今にも泣きそうな声。




『ごめんね、空斗。あたし、心配ばっかりかけて、毎回困らせて…。』




そう伝えようと、一生懸命声を出そうとしたけど、かすれ声さえも出なかった。





ーーーーーー


空斗がナースコールをたぶん押したのだろう。




空斗は部屋を出ていき、代わりに先生が入ってきた。




「どう?体調は?」




「だいぶ…よく…なりました…」




「そっか。それじゃ、普通の病室に戻るからね~」




あたしは首をこくんと縦に振った。




"705号室 笹原 琴音 様"




病室に帰って来て、1番思う事。




"何で死ねなかったんだろう。"




あたしなんて、いらない子なのに。




誰にも、必要とされていないのに。




生きていたって、不幸なだけなのに。




その時、トントンッ。




ノックの音がして、声がした。




「入るわよ。」




ビクッ…!!



冷たい声。




この声…怖い…助けて…




ねぇ…来ないで…!
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