何度でも何度でも…
「ねえ、海斗」

そっと呼びかけてくる声は、とても澄んでいてそれだけで満たされる

どうした、問うように視線を向けると

「後悔、させないでね」

視線を合わせてしるふがつぶやく

「…海斗を選んだこの現実に、後悔させないでね」

吹き抜ける風は、どこか穏やかで温かい

それはずっと離さないでいてというしるふの心の声

だったらそういってくれればいいのに、毎回素直じゃない

しるふの言わんとしてることがわかるから、海斗は、ふっと口角を上げる

「当たり前だろう」

離してなんてやらないから覚悟しとけよ

交差する視線は穏やかで、お互いがお互いを大切に想っていることを知るには十分だ



同時に笑った二人の頭上には、春の息吹を感じた桜が着々と蕾をつけていた


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