何度でも何度でも…
「もう。こだわりある海斗君の意見を忠実に取り入れようと思って聞いてるのに」

てか、見てから言った?今

仕方なく頑張って見上げると

「見た。今」

だから、良いんじゃない

と、抑揚のない声が降ってくる

「海斗君のおめがねには叶わなかったと」

マグカップを棚に戻し、立ち上がるとそれを待っていたように海斗が歩き出す

人混みが苦手な彼女のためにいつもより少し歩調は遅めで

「もー、せっかくのデートなのにさ、しかも彼女の方から誘ってくれたというのにこのテンションの低さ」

やっぱ選ぶ相手間違ったかしら

ふてくされて横を向くしるふに一瞬視線を投げる

誰にも邪魔されず、静かな二人の時間を過ごせる自宅がいいなんて

一応マンネリ化警報を勝手に発令しているしるふには言えない

「そうだけどさー、それとこれとは意味合いが違うんじゃないかなー」

軽く唇をとがらせながら、海斗の手首に手をかける

どうせこの男は、遠距離だろうと一年に一度の逢瀬だろうとこのテンションのままだ

ああ、どうしてこうも淡泊な奴に落ちてしまったのだろう

ふと隣の海斗を盗み見ながら見上げた天井

それでも、なんだかんだ言いつつも海斗から離れられない自分が

一番の原因じゃないか、と頭のどこかで声がした
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