何度でも何度でも…
観念したのか、しるふが腕を腰に回して顔をうずめてくる

それが合図だったようにしるふの背中を強く抱きしめる

ぬくもりがじんわりと広がる

「前も言ったろ、遥さんとは何もなかったって。それにそこまでちゃんと好きじゃなかったんだって」

きっとあのまま付き合っていてもしるふに出逢ったら別れていたのだろう

同じ彼女だとしてもしるふは違う

たぶん、もうこれ以上大切に想う人はいない

だから、決してその手を離したりはしない

「…わかってるもん。…わかってる」

ぎゅっと海斗の腰に回した手に力を込めて、しるふはつぶやく

ホントはわかってる

あの時遥さんと話す海斗の瞳は、友達に向けるようなものだった

医局長とか園ちゃんとか仲のいい人に向けるような瞳

決して自分に向ける瞳とは違う

だからわかるんだ

海斗の中にもう、彼女がいないことは

でも、それでも、やっぱりちょっとだけ嫉妬してしまう

それだけ海斗のことが好きだから

それも、わかってる

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