何度でも何度でも…
「どうした、立花」

こう長く付き合っているとこいつは本当にエスパーなんじゃないかと思うことが多々ある

そう、こうして切に願った時にふらりと現れてくれるように

見上げれば思った通りの静かな瞳が見下ろしている

「黒崎先生」

何を隠そう、こいつが諸悪の根源で

しるふの貴重で大切な昼休みを脅かす存在だ

背後で看護師たちの黄色い声が聞こえたような気がしたが、無視しておこう

どうせ夢は夢に終わるのだから

「何してんだ」

そういいつつ昼食のトレーを隣に置く

かたんと音を立てたトレーに乗るのは、栄養バランスをしっかり考慮された黒崎病院自慢の社食メニュー

「いやー、まー、その…」

とっても歯切れの悪いしるふに海斗の眉が寄る

嗅覚のいい海斗のことだ

きっとわかっていて聞いている

こんな状況日常茶飯事、海斗に言わせればきっとこう

「黒崎先生と立花先生が恋人同士って言うのは本当ですか」

椅子を引く海斗に一人の看護師が口を開く

「ああ、本当」

さらりと紡がれた言葉にそっと息をつく

こんなにあっさりと夢を打ち砕かなくったっていいのに

そう思うのは、同じ女としてのサガだろうか
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