何度でも何度でも…
「そうですか…」

しゅんとしてしまった看護師たちはとぼとぼと食堂を後にしていく

その背をしるふはなんとも言えない瞳で、海斗はよくわからないという顔で見送った

しるふは少しの間彼女たちの落胆さに同情していたけれど

海斗はすぐに興味を失ったらしく、椅子を引いてしるふの隣に腰を下ろす

「珍しいじゃん、しるふが弁当なんて」

サラダを口に運びつつ、海斗はふと気が付いたようにしるふの目の前にある食べかけの弁当箱に視線を注ぐ

「ん?ああっと、ちょっと冷蔵庫の中のものが痛んでまして…」

使っちゃわないとやばいなーと思ってさ

そういってしるふも昼食を再開する

「てか、あんなにはっきり言っちゃっていいの?あの子たち今日やけのみだよ」

もくもくと食事を続ける海斗をしるふは横目で見る

「いつか分かることだろ。本人たちから聞くか周りから聞くかの違いだって」

「ま、そうだけど…」

そう、黒崎病院において海斗としるふが恋人同士というのは常識的なことなのだ

別に公言したわけではないのだけど気が付いたら全員が知っていた

だからと言って態度を変えることのない黒崎病院の面々にしるふは少し感動した
のを覚えている

それ以来、新入社員が入ってきたら海斗としるふのことを知らせるのが各部署の恒例行事となっている

もちろん、海斗としるふは恋人通しだから決して海斗(しるふ)には手を出すなと念を押しているのだが…
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