何度でも何度でも…
これならまだ海斗に会いたくて外来に通う女性の方がかわいげがあるってもんだ

すーと息をたくさん吸い込んで気持ちを落ち着かせてから

「私はー」

私は彼の恋人よと言おうとして話し出す、が

「立花」

凛とした鋭い声に遮られてしまう

反射的に海斗を振り仰ぐと、黙っていろと告げている海斗の瞳が目に入る

その瞳にしるふはむっとして眉を寄せる

対する海斗はしるふがしぶしぶでも黙ったことを確認した後、正面を向いて

「新城さん、何度言われても答えは変わりません。…仕事があるので」

そういって少し頭を下げる海斗

行くぞ、立花、という海斗の言葉に

「…はい」

むすっとしたしるふはしぶしぶ従う

そのまま階段を上がっていく

医局に続く廊下で海斗の背を見つめていたしるふは、唇をとがらせながら

新城、新城梢だと今更ながらに彼女の名前を思い出していた

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