何度でも何度でも…
「海斗はずるいって言ってるの!」

「何が」

いつもよりも低めの不機嫌そうな海斗の声

たぶん新城さんのことで元々機嫌が悪かったところにしるふがイライラを隠そうとしなかったために、珍しく影響されて海斗の機嫌も悪くなっているようだ

聞く気はあるだろうけれどいつもの穏やかな瞳でない海斗

その海斗を睨み付ける

もう止まらない

溜めていた想いが溢れていく

見る見る涙を浮かべるしるふに海斗は少したじろいだようだ

不機嫌そうに細められた瞳に違う色が灯る

海斗はしるふの涙に弱い

その自覚があるだけに海斗はできるだけしるふが泣かないように、と思っているのだが…

はあ、と肩で大きく息をしたしるふは堰を切ったように海斗を涙目でにらみながら言う

「もう一回いうけどさ!海斗はずるいよ!!なんでいっつも私を守ろうとするの!?なんでいっつも全部一人で抱えようとするの!?私は海斗にとって何!?ただ守るだけの弱い女!?」

一気に話したしるふはもう一度肩で大きく息をする

「しるふ…」

海斗が呆気にとられたようにつぶやく

先ほどまでの不機嫌さは、しるふの予想のつかない言葉に対する驚きでどこかに行ってしまった

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