何度でも何度でも…
てっきりしるふは新城に対してた気持ちを焼いていたのだと思ったのだが、どうやら違ったようだ

確かに焼きもち位でしるふはあそこまで不機嫌にはならない

すねる程度のはずだ

だからそんなに新城がしるふの疳に触ったのかと不思議に思ってはいたのだ

少し感情が落ち着くのを待っていたのだろうか、少しの沈黙の後、しるふが大きく息を吸い込む

「私は…、私は海斗に守られるだけの女にはならない」

息を吸い込んだ割にはしるふの声はいつも通りの大きさで、何かを決めた時の凛とした響きを含んでいた

相変わらず涙目の、けれど真っ直ぐに見つめてくるしるふに、その言葉に海斗は驚いたように瞳を大きくする

「もっと頼ってよ。いっつも海斗は私が苦しい時に助けてくれるじゃない。抱きしめてくれるじゃない。なのに私は何もできないの?海斗がさ、私を令嬢たちのいざこざに巻き込みたくないって思ってるのは知ってるよ。だから恋人がいるって案に言わないことも知ってる。…でもさ、私そこまで弱くないよ?」

もう十分に海斗が想ってくれていることを知っているから

その瞳が優しいこともわかっているから

ちょっとやそっとのことで傷ついたりはしない

不安になって海斗を疑ったりはしない

彼女たちの思う壺になったりはしない

だから…

「だからさ、もっと頼ってよ」

もういったしるふの声は弱弱しくふとうつむいてしまう


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