何度でも何度でも…
「しるふ」

恋人の名前を呼ぶ海斗の声音は穏やかだ

しるふが決して弱い女ではないことは知っている

でも泣き虫なことも知っている

でも、大切だからこそ守りたい

特に自分に関する厄介事でしるふを泣かせるのは不本意だ

それに例えどんなに期待を押し付けられようとも自分の地位やその将来にしか妙味のない女が寄って来ようともしるふがそばにいてくれるのなら構わない

それでいちいちしるふが疑ってきていたら少し疲れるけれど、しるふは「またいつもの?」みたいな顔をするし、すこしすねる程度だ

あれは、別に気にしないけど、でもやっぱり気になるし嫌だというしるふの意思表示だ

それが分かるからしるふもいちいちつっかかてきたりしないから

お互いに信頼しているのが分かるから

だから海斗としては構わないのだ

けれど…

「ばかいと…。大っ嫌い!!」

再び顔を上げたしるふは涙を浮かべながらも海斗を睨み付ける

「しるふ…」

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