何度でも何度でも…
「海斗、おはよ」

「おはよ」

しるふに呼ばれて視線をよこした海斗は、柱から背を離す

そしてそのまま人の流れが多い改札をくぐる

人の間をするすると歩くのが苦手なしるふは海斗の腕に手をかけて歩く

気が付くと人の波に流されて海斗にあきれられたこと多々…

隣を歩いていたしるふがいないことに気が付いた海斗が戻ってきてくれて、ため息交じりに手をつないでくれるからしるふとしては人に流されるのも悪くないと思っているのだけれど…

今日は平日だから会社員の姿はあってもカップルの姿はない

スーツを着込む会社員にまぎれて電車に乗り込む

込み合うオフィス街とは反対方向だからラッシュ時に軽くかぶる時間帯でも電車はそこまで混んでいない

運よく二つ席が空いて、二人で並んで腰掛ける

ふと前に視線をやると仲良さ気にいちゃつくカップルが目に入る

うーむ、目のやり場に困るなー

心の中で苦笑したしるふは、少し視線をずらして窓を流れる風景を見る

電車やバスに乗ったときや二人で街中を歩くとき、周りに人が多ければ多いほどお互いに話さなくなる

別に話したくないんじゃなくてただ話しにくいのだ

お互いの声が聞き取りにくくて話がうまく続かない

だからって気まずい沈黙ってわけでもない

こうやって流れていく時間も大好きだ

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