何度でも何度でも…
「俺の場合は警戒心がないんじゃなくて、どうすることもできない不可抗力ってやつ。事実、危ない目にあったことはない」

確かに、ゴシップ記事とか今までないけど

だからって海斗に言われたくはない

「しるふは自分が女であることをもう少し自覚すべきだって。いつでも俺が飛んで行けるわけじゃないんだし」

「……海斗君、一応それは私に対する心配と受け取ってよろしいのでしょうか」

とても回りくどく、わかりにくいけれど

「どーぞ、ご自由に」

会話が途切れて沈黙が流れる

そんな時間でもこの電話を切ってしまおうとは思わない

「あー、そうだ。しるふ」

話題を無理に探しているわけではない

思いついたことを、他愛のないことを口にしているうちに時間なんてあっという間に過ぎてしまう

「なに?」

「明後日と明々後日学会でそっち行くから」

「ほんと!?」

うれしさにがばりと起き上がる

ああ、なんて単純なんだ、と思うけれどそれが恋で

やっぱり電話よりもメールよりも隣で笑っていてほしい

もちろんそんなこと言わないけど、言ってなんかやらないけれど
< 57 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop