何度でも何度でも…
学会二日目

学会なんて名ばかりで本当はただ単に自分を勧誘したいだけなのが見え見えだ

だから来る気なんてさらさら起きるわけがないんだよ

どうせ形式に沿って作られたであろう資料を意味もなくめくりながら海斗は思う

面白くもない、何の進歩もない話し合いで時間をつぶしているくらいなら患者と向き合っていたい

でも一応メンツというものがあるからたまに顔を出すけれど、はっきり言って退屈な時間でしかない

いつ医者としての寿命を迎えるかもわからない年寄りたちと顔を合わせて何が楽しいんだ

しかも最後にはお決まりのように、こうこうこういう研究をするから参加してみないかだとか腕のいい医者がいるからチームに入れてくれないかだの

黒崎病院とつながりを作りたいという願望丸出しの勧誘が待っている

それが嫌で嫌で仕方がない

数年前、こんな業界ならやめてやろうと思ったこともある

欲望と因縁が渦巻くこんな世界に巻き込まれて医者をしている意味なんて見いだせなかったから

そこまで医者でいたい理由も特になかったから

そろそろ医者でいることに、相手の笑顔に隠された欲望を探ることに疲れていたころに神宮寺晶から黒崎病院のERを再編するから来ないかと誘われた

初めは行く気なんかなかった
< 96 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop