宮都桜子溺愛日記
プロローグ 掬畝保和
ハッと目が覚めて俺は何故かベッドの横に座っていた。
「何故だ!!」
眠気も一気に吹き飛んだ早朝。あと3分で時計が鳴り出すと言うところで起きてしまった。
あと3分、ゆっくりと眠り、つかれを少しでもとりたかった。
「何故だ、何故3分前なんだ。何故だ、何故俺は座っていたんだ」
ぐだくだいいながら寝間着を脱ぐ。
残念ながら筋肉質とは言えない体だが別に太っている訳じゃない。運動をしないがゆえこんな映えない体付きなのだ。
きっと小説や漫画の主人公はすらっとしながらも筋肉があるのだろう。
しかし俺にはすらっとの言葉しかなく筋肉のなくなった老人のようだった。
横においてあったシャツに手を伸ばす。ズボンも穿いて、上着を羽織る。うちの学校は学ランなのだがどうも息苦しい。
「眼鏡どこだ」
いままですりガラスをとおしていたような世界を透明に戻すため眼鏡を探す。
枕を持ち上げたところで下に埋もれていた眼鏡を発見した。
「あったあった」
そしてかける。
途端に止め忘れていた時計が鳴り出し一瞬体を震えさせてから時計を止めた。
「さぁさぁ朝ごはん朝ごはん」
とっとっとっとっ
リズムよく階段を降りて行くと母が丁度ご飯をテーブルに置いたところだった。
「おはよう」
「おはよう、やす」
微笑むとキッチンの方へさがって行く母。
食パンにマーマレードを塗ると口に運んだ。
「今日はいつ帰ってくるの?」
母さんがキッチンから野菜ジュースの入ったコップを持って出てくる。
俺は母さんの方を見ながら口に入ったパンを飲み込み言う。
「4時30分頃かな」
部活をやっていない俺はみんなよりも早めに帰ってこれる。いま時期だと皆は6時まで部活だろう。
「あらそう」
「なんで?」
コップを母から受け取りそのまま一口、二口と飲んだ。
「今日久しぶりにチーズケーキでもつくってみようと思ってね」
「本当!?」
その時上の階段からかけ降りてくる足音が響いた。
「母さんおはよう!なんで起こしてくれないの!」
兄さんだった。
頭ボサボサでネクタイもよれよれだ。
「おはよう、ゆう。起こしたわよ」
「うそだ!」
俺は母と兄さんがああだこうだいっている横を食器をもって通った。
洗面所へむかう。歯を磨いて、顔を洗う。少し制服が濡れたが気にしない。そして鏡に映る自分をみた。
今日もばっちり。