ほろ酔い気分で聖夜を過ごす


実際には、家人である渉に「酒いっぱい買ってこい、ここで飲むから」「片付けはして下さいね」とした会話のみで『許可』が成立している。因みに、藤馬が片付けしないとは、渉も分かっているだろう。


そうとは知らない五十鈴は、「なら……」と一升瓶を藤馬に返す。


「人見るなり悪者扱いしてよぅ。あー、傷ついた。媚びる女らしくお酌してくんねえかなぁ」


「根っからの悪党が何を言う」


むすっとした五十鈴。閉じられた左目を更に力込めて閉じ、開けられた右目は射るように藤馬を見る。


コタツ挟んでの対面、正座した五十鈴は猫背とは無縁であり、片膝立てて飲む藤馬とは対照的であった。


「なに、お酌もしてくれねぇ、サービス精神ねえ女はさっさと帰れや」


「お前が、悪さしないように見張る」


「タヌキか何かかよ、俺は……」


< 13 / 49 >

この作品をシェア

pagetop