ほろ酔い気分で聖夜を過ごす
実際には、家人である渉に「酒いっぱい買ってこい、ここで飲むから」「片付けはして下さいね」とした会話のみで『許可』が成立している。因みに、藤馬が片付けしないとは、渉も分かっているだろう。
そうとは知らない五十鈴は、「なら……」と一升瓶を藤馬に返す。
「人見るなり悪者扱いしてよぅ。あー、傷ついた。媚びる女らしくお酌してくんねえかなぁ」
「根っからの悪党が何を言う」
むすっとした五十鈴。閉じられた左目を更に力込めて閉じ、開けられた右目は射るように藤馬を見る。
コタツ挟んでの対面、正座した五十鈴は猫背とは無縁であり、片膝立てて飲む藤馬とは対照的であった。
「なに、お酌もしてくれねぇ、サービス精神ねえ女はさっさと帰れや」
「お前が、悪さしないように見張る」
「タヌキか何かかよ、俺は……」