ほろ酔い気分で聖夜を過ごす


「お前、実は男なんじゃねえの」


一升瓶をラッパ飲みしたあたりから、淑女の文字は消えた。


腕を広げて酔いつぶれているさまとて、女にとってはあるまじき――


「素人AV出演希望か、ああ?」


寝息を立て始めた女を殴りたい気分となった。


「俺は優しくねえって、言うのによぅ。どいつもこいつも」


『藤馬さんは、厳しくて優しい人です』


いつかの言葉に舌打ちしそうになる。


全てを呪え、そのためだけに産まれてきたのだから。そう言われた、“地獄そのもの”の前で対話し、果ては無防備を晒すとは、危機感が抜けているとしか言いようがなく。


「俺は、何もしないってか」


そもそも藤馬は、危険ではないと心許されている気がしてならない。


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