純愛短編集(完)
あたしは、自分でも知らず知らずのうちに呟いていた。
「ずっと傍で、料理を作りたい…ずっと、勉強を教えて欲しいよ…」
目を見開いた彼の表情を見て、あたしはハッとした。
頬が一気に染まっていく…鮮やかな紅色に。
そしてまるで狙ったかのようなタイミングで、チャイムが鳴った。
次の授業が終わっても給食の時間だから予習はしないし、班の当番は配膳である。
これなら、意識すれば今日は関わらずに済む。
幸い四時間授業なので、学活が終われば走って帰ればいい。
そして給食が終わり、学活も終わったその時だった。
「さようなら」の掛け声と共に、教室を飛び出そうとした。
そう、飛び出そうとしたあたしの腕を、彼は掴んだ。
周りに学校の生徒どころか近所の方々、つまり人が誰もいない状況。
二人きりになってしまい、しかも腕を掴まれたまま…。
逃げることは出来ない。
なんせ、相手は男である。
女の自分が、男に力で勝てるはずがない、身長差だってあるのだ。
「………あ、の…」
恐る恐る彼の背中に声をかけてみたら、彼は体の向きを180度変え、自分と向き合う。
そこから出てきた言葉は、思いもよらない言葉だった。
真剣な表情をしながら、あたしに向かって言った。
「好きだ」
今度はあたしが、目を見開く番だった。
彼はあたしをからかってるのだろうか。
そんな疑問が心の中に生じた。
「君の人生を、俺にください」
中学3年生にして、生涯を誓い合った二人だった。
この二人に、神の御加護が有らんことを―――