シークレット ハニー~101号室の恋事情~
今日、初めて彼が帽子を脱いだ姿を見た。
少し長めの茶色い髪の下にある顔は、やっぱり思わずため息をもらすほど美形だった。
イケメンっていうより、美形。
歳は私と同じくらいかな。
あ、でも笑うとあどけないから、もしかしたら年下?
年齢を探ってる私に、彼は困り顔で微笑みながら言う。
「住人の方から、外がうるさいって苦情を頂きまして」
「え、苦情が? ……野田さん、そういう事ですので帰ってください」
苦情受けるなんて最悪だ。
くそぅ。今までいい住人で過ごしてきたのに、野田のせいで!
きつく睨みながら言うと、野田は「じゃあ来週からよろしく」と片手をあげてようやくマンションの敷地内から出ていく。
その姿を見てから、まだ近くに立っている彼と向き合った。
「ご迷惑おかけしてしまって申し訳ありませんでした」
「いえ。大丈夫ですよ。
僕の部屋は隣ですが、そこまで騒がしくは感じなかったですし。
苦情電話をしてきた方も、特別不機嫌なだけだったのかと。
そこまで気にされなくても大丈夫ですよ」
「隣……101号室の方だったんですか」
彼が示したのは、一番奥にある部屋だった。