シークレット ハニー~101号室の恋事情~
会社では私の異動の話が広まって、更衣室や食堂ではひそひそと噂されたり、中には堂々と「自業自得」みたいな事を笑いながら言って来たりする人もいる。
毎回ながら私が完全に悪者扱いされているのは正直気に入らないし、野田と営業店で顔を合わせる度に殴りかかりたくはなるけれど。
五十嵐さんと一緒に過ごす時間が、そんな私の中の淀んでいる部分を浄化してくれているように感じていた。
五十嵐さんが普段何しているのかは、実は未だによく分からない。
夜遅く帰ってくる事もあるし、何か仕事をしているようにも感じるけれど、聞いても教えてくれなくて。
そのうちね、とそればかり。
仕事をしているのか、していたとして何の仕事なのか。
それと、どうして私なんかを好きだって言うのか。
その辺が疑問ではあるけど、五十嵐さんと過ごす時間はそんな疑問を忘れるくらい心地よかったし、彼が言いたくないのなら詮索するのもよそう。
そんな風に思うようになった。
でも。
五十嵐さんと過ごす時間の心地よさのせいで、忘れてはいけない事まですっかり忘れていた事に気づいたのは、そのすぐ後。