シークレット ハニー~101号室の恋事情~


――身の程知らず。ブス。庶民。尻軽女。アバズレ。

会社帰りで疲れている私のもとに、そんな内容の手紙が届いたのは、五十嵐さんに告白めいた事をされてから10日あまりが過ぎた頃だった。


「アバ……」


しかもこの間のより悪口が多くなってる。
でもそれも当たり前だ。

――五十嵐篤志に近づくな。

その言葉を無視したのだから。

手紙の事を五十嵐さんに言おうと思っていたのに、野田の事や異動の話ですっかり流れたままになっていた事に、今気づく。

こんな、自分の名前を隠して保身しながら他人を叩いて思い通り動かそうとするやつの言葉なんかに従うつもりはないけど、やっぱり見られているのは気持ち悪い。

冒頭の悪口が増えたのは、きっとまた五十嵐さんがうちにきたところを見られたからだろうし。
って事は、その辺から常に見張ってるって事なのかそれとも……。



< 106 / 313 >

この作品をシェア

pagetop