シークレット ハニー~101号室の恋事情~
このマンションは、五階建てて私が住むのは一階。
ちょっとしたエントランスに集合ポストがあって、そこから通路に入って一番近い部屋が107号室。
ちょうど私の部屋が102だから、その隣ってなると101号室になる。
だけど彼は「いえ、住人ってわけではないんです」と言う。
どういう事だろう。
ここに住んでいる以上、住人でないハズがない……。
と、そこまで考えてハっとした。
そういえばさっき、彼は苦情が入ったって言ってたけど。
それって、つまり―――。
「住人の方はあまり知らないようですが、101号室は管理人室なんですよ。
自己紹介が遅れました。
僕、このマンションの管理人を任せられています、五十嵐篤志といいます。
……さきほどの件、少しよろしいですか?」
にっこり微笑む彼は、どこまでも美しく。
逆らえないオーラをたっぷりとまき散らす彼に、目を逸らした後、「はい……」と頷いた。