シークレット ハニー~101号室の恋事情~
「雨宮さんですよね」
振り向くと、スーツ姿の女の人が立っていた。
緩いウエーブのかかった髪は明るい茶色で、高い位置でキレイにまとめられていた。
身体の線は細くて背が高い。
私が160だけど、10センチ近く高いように感じた。
私よりも少し年上だと思う。
それにしても、まったく気配を感じなかったけれど、いつの間に後ろにいたんだろう。
特にセキュリティの厳しいマンションではないから、集合ポストまでは誰でも簡単に入る事ができるけど、それにしたって足音も何も聞こえなかった。
「そうですけど、なにか?」
向こうは私の名前と顔を知っているみたいだけど、私には見覚えのない顔だった。
濃いアイメイクをした瞳が、私を睨みつけるように見る。
「何度警告すれば分かるのかしら」
「警告?」
警告って言葉を聞いて何かの管理会社の人かな、なんて考えた私に、その人が続ける。