シークレット ハニー~101号室の恋事情~
そう言って興奮しながら見せてきたのは、メモリースティック。
どうやら、盗聴器から録音した音が保存されているらしい。
五十嵐さんに無理やり鳴かされた時の、この上なく恥ずかしい声とかが。
……悔しい。これ以上ないネタを握られた気分だ。
「その前に、盗聴は犯罪です。ベランダへの侵入も不法侵入です」
「だから何? アンタ今の自分の立場分かってんの?
弱味握られてるのに逆らったりして頭おかしいんじゃない?」
「おかしいのはそっちでしょ。
五十嵐さんの事が好きなら、窮屈に縛るんじゃなくて自由にしてあげたいとか思わないの?
ファンなんでしょ?」
あられもない声を聴かれていたと思うと顔から火が出そうだったけど、ここで負けるわけにもいかずに言い返す。
私の言葉の何が効いたのか。
女の人は険しい顔のまま黙っていた。
だけどどうやらそれは打ち負かしたわけではなく、噴火の前の静けさだったようで。