シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「いいから別れてよ! アンタなんか篤志にとってマイナスにしかならないんだから!
アンタみたいな女……」
「―――葉月を侮辱するのはいい加減やめてくれる?」


突然聞こえてきた第三者の声に、女の人がぴたりと止まる。
振り向くと、廊下から五十嵐さんが姿を現したところだった。

いつも外に出る時はかぶっている帽子をかぶっていない。

という事は、部屋の中にまで怒鳴り声が聞こえてきて慌てて出てきたのかもしれない。
どこかの部屋から苦情でも出てたらどうしよう。

こんな時だけど、そんなご近所トラブルが気になってしまう。


「篤志……っ」
「羽田さん、とりあえずそれ、俺にくれる?」


そう言って笑いかけると、羽田さんと呼ばれた女の人は少し戸惑いながらも笑顔を見せてメモリースティックを五十嵐さんに手渡した。

私をゆするための大事なネタのハズなのにいいのかな、なんて思いながら見ていると、それを受け取った途端、五十嵐さんの態度が豹変した。

まるで汚いものでも見るような目で羽田さんを見て、嫌悪感をむき出しにする。



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