シークレット ハニー~101号室の恋事情~
「葉月がカッコよく戦っていたからなるべく我慢しようとしたんだけど。
怒りをため込みすぎて吐き気がする」
本当にイライラした様子でそう吐き出した後、五十嵐さんは私を守るみたいに私の前に立った。
五十嵐さんの背中に視界をほとんどおおわれて、その時ホっとした自分に気づいた。
もしかしたら無意識に緊張していたのかもしれない。
いくら普段冷静だって言っても、こんな事は初めてだったから。
「羽田さん、こういうのは迷惑だからやめて欲しい。
俺の気持ちはもう分かってるだろ」
「気持ちって……」
「俺が羽田さんを代えて欲しいって言ったのは、羽田さんが俺に色目を使い始めたからだ。
羽田さんの行動に嫌気が差しての行動だよ。
それをどうして葉月や妹のせいにできるのかが俺には分からないんだけど」
「だって……だって、そんな女より私の方がずっと……っ」
「葉月を侮辱するなって何度言えば分かる?」
守られている身の私でさえ、五十嵐さんの低くとがった声を怖いと思ったんだから、それを向けられた羽田さんの恐怖は私の何倍もにあたるハズだ。
予想通り、羽田さんはびくっと身体をすくませたまま黙ってしまう。