シークレット ハニー~101号室の恋事情~
そんな事を言って微笑む五十嵐さんを見て、さっきの冷たい瞳をした五十嵐さんを思い出した。
「あんな冷たい顔ができるなんて知りませんでした」
五十嵐さんは、少し黙ってからわずかに微笑む。
「ごめん。怖がらせた?」
「怖かったっていうか、驚きました。
私の中の五十嵐さんは、いつも微笑んでいて穏やかなイメージだったから。
あんな風に怒るんですね」
「葉月の前では嫌われないようにいい顔ばかりしてるから、俺」
「そんなわけないじゃないですか。
いい顔したいなら私の嫌がる事はしないでしょ」
「葉月の嫌がる事なんてした事あった?」
「ありました。……この間とか、盗聴器があるからイヤだって言ったのに……」
もごもごと責めると、五十嵐さんは思い出したように「ああ」と笑う。