シークレット ハニー~101号室の恋事情~
高卒でこつこつ頑張ってきた私よりも、今年入社したばかりの野田の給料が数段いい事も。
野田が言いふらした噂のせいで、私が異動しなきゃならない事も。
全部が腑に落ちない。
野田がエリートコースじゃなかったら、噂に対する会社の対応も違ったハズだ。
本当にバカを見るのは地道にやってきた人間なんだな、と理不尽さを身を持って実感する。
そして、それだけの優遇をされながら当たり前~みたいな顔してる野田を殴りたい。
「とにかく、あれが俺の番号だから登録しといて」
「ごめん。もう消しちゃった」
「まじで? しょうがねーな。じゃあまた着歴残しておいてやる……」
「いらない。この先私には必要ない番号だから。
もういい? 私仕事に戻りたいんだけど」
時計を見ながら言うと、野田は「冷たい女」とからかうみたいに笑う。
それからふっと薄気味悪く笑みを浮かべた。