シークレット ハニー~101号室の恋事情~
驚いて勢いよく顔を上げると、クッキー片手に困り顔で微笑む五十嵐さんの姿があって。
「勝手に見ちゃダメでしょ」と咎められる。
「す、すみません。つい……」
謝ると、五十嵐さんはため息をついてから腰を下ろして、私の前に個別に包装されているクッキーの入った箱を置いた。
さっきの紅茶といい、なんだか高級そうだ。
「あんまり見られたくないモノだったのに」
丁寧な敬語を使っていた五十嵐さんの口調が変わったのには気づいたけど、「すみません」とだけ言う。
「あの、誰にも言いませんから」
「俺が芸能人だったって事を?」
「……やっぱりそれ、五十嵐さんなんですか?」
「そう。前、バンド組んで活動してたんだよ。
今はもう辞めたけどね」
「解散したんですか?」
「いや、バンド自体はまだやってるけど。俺が個人的に抜けただけ」