シークレット ハニー~101号室の恋事情~
そう言った五十嵐さんの声は少し小さくて、なんだか今までに比べて元気のないように感じた。
伏せている瞳もなんだか意味ありげな感じだし、なんて思いながら見ていると、ばちっと目が合う。
五十嵐さんはソファに深く腰掛けて、何かを考えるように指先で顎を触りながら私を見る。
じろじろ見られて不愉快な気分になって「なんですか?」と顔をしかめると、五十嵐さんがゆっくりと話し出す。
「いや、誰にも言わないなんて言うけど、雨宮さんがどういう人なのか知らないしどうしようか考えてたんだ」
言っている事は一理あるだけに、「それもそうですね……」とだけ呟く。
私にはよく分からないけど、芸能界とかって色々大変そうだし。
もしもここに住んでるってバレたら、いくら引退しているとは言え、ファンの人とかもいたんだろうし、引っ越しとかも必要になるのかもしれないし。
野田に部屋がバレたってだけで憂鬱になってた私とは違うレベルで生活に支障がでそうだ。
「じゃあ、契約書でも書きましょうか?」
「書いたところで、それを雨宮さんが守るか分からないし」