シークレット ハニー~101号室の恋事情~
◇可愛い嫉妬
「そういえば、元カレはあれから何も言ってこない?
野田とか言ったっけ」
五十嵐さんが不意にそんな事を言い出したのは、野田にセクハラ発言をされて怒り心頭した数日後だった。
あまりのタイミングに、部屋っていうより私自身に盗聴器が仕掛けられているんじゃないかと不安が走る。
普通に考えてありえないけど、五十嵐さんならあってもおかしくないと思えるのが嫌だ。
というか、盗聴器って単語が度々頭に浮かぶ自分が嫌だ。
きっとそんな物騒な言葉を一度も頭に浮かべずに過ごしている人だってたくさんいるハズなのに。
「もしかして何かあった?」
黙って色々考えていたせいで返事が遅れてしまった。
ソファに座っていた五十嵐さんがわずかに顔をしかめて立ち上がる。
「あ、いえ、大丈夫です」
「俺に言えない事?」