シークレット ハニー~101号室の恋事情~


慌てて言ったけれど、五十嵐さんは私の目の前まできていて。
誤魔化せない雰囲気を感じて、困りながら五十嵐さんをチラっと見上げた。

つい先日アドレス交換したばかりの五十嵐さんから、土曜日部屋に行っていいかって内容のメールがきたのは一昨日の事。
今日がその土曜日で、約束通りの13時、インターホンが鳴った。

それから五十嵐さんが持ってきてくれた高そうなパスタソースでお昼にしようと、パスタをゆで始めたところで野田の名前が出たってわけで。

ぐつぐつと音を立てて沸騰する鍋にパスタを入れながら、できるだけなんでもないような感じで説明する。


「えっと、ちょっと野田にパワハラとかセクハラ系の発言をされて……その、軽く言い寄られただけなので」


だから大丈夫です。
そんな笑ったけれど、五十嵐さんは軽く流してくれる気はなさそうだった。

心配からしかめていた顔に、違う感情が入り混じった気がする。



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