シークレット ハニー~101号室の恋事情~
けれど五十嵐さんは私の横に立ったまま動く様子はなくて。
仕方なく、小さなため息をついてゆで時間が後少しになったパスタを眺めていると、五十嵐さんがこちらを見た。
「俺が会ってみようか」
驚いて顔をしかめると、五十嵐さんが続ける。
「とりあえず、俺が会ってこれ以上葉月を不快にさせるような事を言ったら許さないとか一度牽制してみて、それでも続くようなら別の手段を……」
「ダメです! そんなの、絶対にダメ」
「そんなに俺頼りない?」
「そうじゃなくて……だって、野田に会ったらきっと五十嵐さんが元芸能人だって気づかれちゃうから」
「別に構わないよ。一生顔隠して生活する気もないしね。
それに、元芸能人だからって葉月を守れないなんておかしいだろ」
「でも、野田が言いふらしたりして、ここに住んでるなんて事が広まっちゃったら、五十嵐さんここには住めなくなるでしょ?
私のわがままで悪いですけど……それが嫌なんです」