シークレット ハニー~101号室の恋事情~
「確かに噂が広まってここに住んでるって事が知れ渡ったりしたら、興味本位で周りをウロウロするやつも出てくるかもしれないし、その時葉月にも何か危害が加えられる可能性もある」
「私の事は別に……」
気にしなくていいと言おうと思ったのに、それを遮った五十嵐さんが、大事な事だろと咎めるように言うから、大人しく黙る。
「だからそう考えると、葉月の言うように野田に下手な事を言うのは得策じゃないかもしれないけど……。
俺はやっぱり、葉月がそこまで言われて嫌な目に遭わされてるのを黙って見てるのは無理だ」
「でも、あの、私は大丈夫ですから。
野田は本当に卑怯で嫌なヤツだから、五十嵐さんに会わせたりしたくないんです。
五十嵐さんが嫌な思いする事になったりしたら嫌だし……」
会わせたら、十中八九嫌な思いするのは確実だから余計に。
おおげさじゃなく、あんなの五十嵐さんの視界になんて映したくない。
少し前までは、さすがの野田でも視界に映したくないとか、そんな風に考えてしまうのはちょっとひどいのかな、とか思ったりもしたけれど。
もうそんな気持ちは完全になくなった。