シークレット ハニー~101号室の恋事情~


そう言った五十嵐さんが、入れたばかりの紅茶を一口飲む。
それから、じっと見つめている私と目を合わせて微笑んだ後「六年前くらいに、両親が再婚したんだ」と目を伏せて話し出した。


「元々母親とふたりで暮らしてたんだけど、母親が再婚して新しい父親と四歳下の妹ができた。
俺、ひとりっ子だったから最初は戸惑ったりもしたけど、妹が懐いてくれて自然とぎこちなさもなくなっていった。
確か、俺が20で妹が16の時だったかな。
今、妹は22だから、葉月のふたつ下だよ」
「妹さん、今はどうしてるんですか?」


五十嵐さんは、その質問に苦笑いに近い微笑みを浮かべて「さぁ」と答えた。


「記事が出てから一度も会ってないから分からないんだ」
「一度も……?」


五十嵐さんの仕事が忙しかったから?と思ったけれど、五年間も一度も会わないなんておかしい。
妹さんだって懐いてたって言うのになんで……。


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