シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「雨宮さんが納得できないのも分かるが、篤志が仕事ができるのは確かだ。
実はこの一年半、派遣扱いで業務を手伝ってもらってたんだ」
「派遣? じゃあ五十嵐さん、どこかに派遣会社に登録してたって事ですか?」
「ああ。私の妻の働く派遣会社にね。
まぁ、雨宮さんも知っている通り、篤志は世間に顔が知れているから普通に自分で仕事を探して就職するのは難しい」


それは分かるけど、だからってそんなコネをフル活用して課長だなんて……納得できない。
部長はそんな私の心理を読んだように、困り顔で微笑んで続ける。


「篤志が色々と苦労してきたのも知っているから、つい気をかけてしまってね。
それに、芸能界を引退してしばらくは今にも消えるんじゃないかってくらい生気を失って見えたから、余計に放っておくなんてできなかったんだ」


そうか……。部長は、五十嵐さんの家庭の事情や、ひどい記事の事を知っているんだっけ。





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