シークレット ハニー~101号室の恋事情~


あくまでも、すべて抜き打ちの仕事でないといけないから、それゆえ誰にも口外したりしない。
だから、監査課には口が堅く口数の少ない暗い人が集まるんだっていうのは、入社してきてすぐ聞いた噂だ。

でも確かに、黙々と仕事をすればいいからか、コミュニケーション能力に欠けた人なんかがよく配属になっているのは知ってる。

同じ社内にあって、監査課だけがまったく違う空間にいる。
そう考えると、五十嵐さんにもできない仕事ではないのかもしれない。


「部長が上にお願いして、課長の椅子を空けてもらったんですか?」


元監査課課長は一体どうしたんだろう。もし、五十嵐さんが入ってくる関係でどこかに異動させられちゃったならあまりに不憫だ。
そう思って聞くと、部長は困り顔で笑う。


「まだ公にはしていないが、ちょっと前の課長が問題行動を起こしてね」
「問題行動?」
「ああ。次に監査に入る予定の店舗を飲み会の席で口外してしまったんだ」
「え……っ」


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