シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「先に言っておくと、私は野田がタイプだっていう、距離感保てる女じゃない」


六年前までは確かにそうだったかもしれない。
自分のテリトリーに踏み入れて欲しくないから、相手の内側にも踏み入らない。

一緒にいる時間は共有するけど、離れている時間は相手がどう過ごそうが興味がなかったし、自分のひとりの時間も邪魔されたくなかったし、興味すら持たれたくなかった。
なんとなくだけど、執着しすぎる関係が気持ち悪いように思えたし面倒でもあったから。
そこまで夢中になった相手がいなかったからっていうのが正しい理由だったんだろうけど。

自分と相手の付き合いに気持ちが入りきれずに、どこか客観的に見ている部分があった。

多分、相手から別れようと言われれば、なんの抵抗もなく受け入れてたと思う。
なんでって理由を聞かれれば、別に引き留める理由もないからってだけで。

例え相手が明日から私の日常から姿を消しても、何の問題もない。
それぐらいの想いだった。

まるで友達の延長線みたいな気持ちしか抱いていなかった。
恋なんてそんなもんだって、何も知らずに本気で思いこんで分かっている気でいた。






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