シークレット ハニー~101号室の恋事情~
そうだな、と笑った五十嵐さんが繋いだ手をきゅっと握る。
明日待ち構えているだろう噂にため息をつきながらも、伝わる体温が嬉しくて。
せめて今日だけは幸せに酔いしれようと、五十嵐さんの腕に抱きついた。
でもすぐに五十嵐さんの着ているジャケットが気になって。
バっと離れた私に、なんで離れるの?とすぐに不満そうな声が落ちてきて、ジャケットが汚れていないかよく確認しながら答える。
「メイクが移っちゃったらどうしようかと思って……。
よかった。大丈夫そうです」
「別にいいよ。そんなの」
「よくないですよ。こんな高そうなジャケット汚しちゃったら弁償できません。
ファンデーションって結構すぐ服に色が移っちゃうから」
五十嵐さんは面白くなさそうに黙ってしまったけれど、気が付けばもうマンション前で。