シークレット ハニー~101号室の恋事情~
今じゃなく?
そんなニュアンスで聞いた私に五十嵐さんは困ったように微笑んで。
「ごめんね。後でかな。
今は葉月を我慢できそうにない」
そう言って、私を抱え上げる。
太ってるつもりはないけど、痩せてるとも思えないから絶対重たいハズだ。
五十嵐さんは細く見えて意外と筋肉はついているけど、おんぶならまだしもお姫様抱っこなんて腕に体重がかかりすぎるし……。
だけど、下ろしてくださいと駄々をこねたところできっと思い通りにはならない事は私でも分かったから、せめて腕だけに乗っからないように五十嵐さんの首に腕を回してしがみつく。
そんな私の行動を完全に勘違いした五十嵐さんは、嬉しそうに私を見て微笑んだ。
だからもうこの笑顔はズルいんだってば。
“せめて今日だけは幸せに酔いしれよう”
さっき、五十嵐さんに腕を絡めながら思った事が不意に頭を流れて、私のストッパーをゆっくりと外していく。