シークレット ハニー~101号室の恋事情~
初体験なんてもう八年前に済ませているのに、それに似た緊張と少しの期待が私を包んでいた。
無理やり押し倒されてるのに期待してるって、本当にどうなんだろう私。
そんな疑問が浮かんでは、五十嵐さんから与えられる感覚に打ち消されていく。
弱々しい抵抗をしてみても、五十嵐さんは聞き入れてはくれず少し強引に私を検証していく。
でも、正直にぶっちゃけちゃえば、それが返って都合がよかった。
半分、もう受け入れちゃうのもアリなんじゃないかとか流されちゃってる自分を誤魔化す事ができるから。
これは、彼が私に無理やりしている事なんだって。
「“葉月”って、八月生まれだから?」
胸に顔を埋めていた五十嵐さんに聞かれて、自分の名前の事を言ってるんだって気づく。
「そう、です……んっ」
「葉月って呼んでもいい?」
ふわふわした頭に問われて、まだわずかに残っている思考回路を働かせて首を振る。
「ダメ、です……」
その前になんで名前を知ってるんだろう、とも思ったけど、彼が管理人だって事を思いだす。
住人の名前くらい知っていて当たり前か。