シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「雨宮さんの言うとおりだよ。
私もそこは心配だった。話を持ちかけた時、篤志がどんな反応をするのか」


部長はそう言って少し黙った後「でもね、雨宮さん」と続ける。


「篤志にどれだけの覚悟があるのかを見たかったんだ。
この会社に入るためにそこまでできるのかどうか見てたんだ」
「覚悟ですか……」
「それに、周りの人間を納得させるためにもポスターは効果覿面だと考えたんだ。
篤志が会社に貢献している事実があれば、私のコネだとかで文句を言う人間もいなくなるし、篤志本人も少しは堂々と社内にいられるんじゃないかと考えた」
「そうだったんですか……」


確かに、言われてみればそうかもしれない。
ポスター起用が上が出した条件だとしたら、それを承諾した時点で五十嵐さんの入社に誰も文句をつけられなくなるのかもしれないっていうのは、私の頭でも理解できた。

交換条件を飲んだのに、それに後から文句を言う人はいないだろうから。


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