シークレット ハニー~101号室の恋事情~
「これは本当だよ。明日のメール便で支店にも配布されるし、これでうちの会社も一気に追い風が吹くだろうな」
「俺の顔なんか知ってる人はもうそんなにいないと思うけどね」
「知らなくてもこの顔に釣られてくる客は必ずいる」
そう思うだろう?と聞かれて、はぁ、と力なく返事をする。
それから五十嵐さんに視線を移すと、それに気づいた五十嵐さんも私を見た。
「ポスター、いいんですか?」
五十嵐さんは柔らかく微笑んでから、いいよと答えて私に近づく。
そして、目の前まできたところで立ち止まった。
「芸能界でうまく息ができなくなって引退したのは本当だよ。
だから、こういう仕事に抵抗がないって言えばウソになる。
だけど、この条件を出された時、自分でも驚くほど簡単に頷いてたんだ。
葉月に近づけるならって」
「だから、それって私じゃなくても……」
「葉月の言いたい事も分かるよ」