シークレット ハニー~101号室の恋事情~


正確に言うと、昨日のは流されたどころじゃなくて濁流に飲み込まれたくらいの事件ですけど。
投げやりに言うと、五十嵐さんはわずかに眉をしかめた。

傷ついたみたいな表情に、私も同じように顔をしかめる。


「俺と寝た事、後悔してるの?」
「え」
「昨日の俺との事は、流されただけ?」


悲しそうに言われて、返答に困る。
立場が逆だ。これじゃあ、まるで私が悪いみたいじゃない。


「流されたっていうか……でも五十嵐さんだってそうでしょ?
私がたいした抵抗もしなかったから、いけそうだって思ってしただけでしょ。
据え膳みたいな感じで」
「葉月には、昨日の俺がそう見えた?」
「っていうか! なんで私が悪いみたいになってるんですか!
昨日の事はあまり抵抗もせずに身を任せちゃった私も悪いから責めるつもりなんてありませんけど、どっちかっていえば五十嵐さんが強引にした事でしょ?!」


トーンがまるで言い訳だった。
五十嵐さんがいつまでも傷ついた顔してるから、こっちが悪い気になってくる。



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