シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「流されたって表現が気に入らないなら言い方を変えますけど、ほぼ初対面だったのにたった数時間で身体の関係になっちゃうなんて、普通に考えてそういう表現になると思うんですけど!」


まるで私が弄んだみたいに、傷ついた顔をする五十嵐さんへの対応に困って、ついつい声が大きくなる。
睨むように見ていると、五十嵐さんは不貞腐れたような顔をしてため息をついた。


「確かに俺、チャンスだと思ってがっついちゃったし、葉月にとっては犬にかまれたようなものかもしれないけど」


とてもじゃないけど、犬にかまれたどころの騒ぎじゃないけど。

すねたような表情は子どもみたいで、母性本能がゆすぶられる。
そういえば歳を聞いてないけど、いくつなんだろう。

落ち着いてるからいくつか年上かなとも思ってたけど、今の様子を見る限りは年下にも見えるし。

何歳だろうと予想しながらじっと見つめる先で、五十嵐さんが真剣な表情をする。
その顔からは、さっきまでのあどけなさは消えていて。

男らしい顔に、今度は母性本能とは違う部分がドキっと跳ねた。



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